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◆アプローチ〜ゾーニングの決定=建築の骨格づくり
今年の設計課題「高齢者施設を併設した集合住宅」では、高齢者施設利用者のアプローチ、管理・サービスアプローチ、集合住宅へのアプローチの3つが建築物へのアプローチとして考えられます。
これらをどう設定するかで、建築内部のゾーニングが決ってきます。
例えば東西50m南北40mの敷地で、道路が南側一面であった場合に、高齢者施設のエントランスへのアプローチを建築物の中央に取ったとします。
エントランスホールの東側(右手)に受付カウンターのある事務室を設ければ、東側の数グリッドで管理・サービス機能のゾーンを構成していくのが、まとまりやすい方向になります。
この場合、管理・サービスゾーンに属する厨房と接点を持つべき所要室に食堂がありますが、このゾーニングの方向で進んでいけば食堂は北側に面して配置されることになるはずです。
逆に食堂を南側に面して設けようとすれば、エントランスホールの西側(左手)になり、必然的に厨房は、東側にある管理・サービスゾーンから分離するしかなくなります。
今年の課題の難しい点は、高齢者施設のゾーニングに加えて、集合住宅のゾーンをどこに挿入するかという検討が必要なことです。
上の敷地条件で、食堂が北側に面して配置される方向で進んでいるとき、集合住宅のゾーンを東側に入れようとすると、管理・サービスゾーンから食堂への流れは分断されます。いくら所要室の置き方を変えてもシックリいかないはずなので、やろうとしていることが無理な方向に進んでいることに気が付かなくてはなりません。
このように、自分でやろうとしていることに矛盾が生じていれば、一生懸命所要室を配置しようとしても、エスキースで堂々めぐりを繰り返すことになります。
建築士の塾受講者は、課題2でこういった検討をテーマとしたことをやっています。
◆骨格を決める最初の30分
アプローチ〜ゾーニングが決定されると、その先は所要室を条件に基づいて配置していくことになります。
既に骨格が決まってしまえば、その先の展開は誰がやっても同じような配置になってくるはずです。
他に骨格を決定する要因として、階段・EV、吹抜(中庭)などがあります。
階段・EVは、2階の動線の起点となりますし、吹抜(中庭)によって2階の床の形態が決まりますので、これらの取り方で、その先の展開は、難しくもなるし易しくもできます。
よくできあがった図面が、解答例とほとんど同じになることがあるのは、骨格を決定するこれらの要因の配置を、与条件の中で誘導しているからだと思います。
これは課題をつくる側のテクニックになりますが、解答例を1つ決めておいて、この方向に誘導する条件づくりは可能です。
逆に、骨格の方向性をいくつか検討した結果、条件を決定していけば、何通りかの解答方法(ある程度うまくまとまっていく方向)が可能になります。
ちなみに建築士の塾では、後者の方法で課題をつくっています。
できあがった図面は、十人十色のようでも、骨格によってグループ分けしてみると、何通りかに絞られてくるはずです。
ゼネコン・ハウスメーカーなどの企業単位で行う講座は、3日〜5日連続で行えますので、前日やった全員の図面を骨格によって分類して壁に貼って解説しています。
こういった中に、自分と同じような考え方で、うまくまとめているものがあれば、非常に参考になるはずです。
エスキースにかける2時間のうち最初の30分でやっているのは、この骨格を決めているはずなのです。
このことをかなり意識する訓練をしておけば、自分が難しい方向に進んでいるのか、まとまりやすい方向で進んでいるのか考える習慣ができるはずです。
難しい方向へ無意識に進みながら所要室を納めていこうとしても、シックリいかないのは、誰がやっても難しいことをやろうとしているのだから、当たり前なのです。
このことに気づかずに、1時間30分を経過してやり直そうとすると、最初の30分まで戻って、考え直さなくてはなりません。
所要室をある程度配置してからの手戻りは、大きなロスタイムとなりますので、はじめの道筋をつける段階で十分検討しておくことが重要です。
具体的な方法としては、建築士の塾でやっている解答例構成ダイヤグラム的な検討を問題の配置図をつかってやることもできると思います。誤解しないで欲しいのは、このレベルのスケールでエスキースをつめていくのではなく、自分が進んでいくべき道筋を決定する手段であり、ここまでにとどめておくことを忘れてはいけません。
与条件を翻訳し図面化していくストーリーは、骨格づくりからはじまっているのですから、どういう展開をめざすのか全体の構想をもたなくては、ストーリーの展開は矛盾だらけで、わかりにくい話(図面で言えばゾーニングや動線がゴチャゴチャしているもの)となってしまいます。
例えば、広場は南側だと決めつけてかかるのではなく、このことが内部の所要室の配置にどのように影響するのか考えてから、全体のバランスをみて決めることが大切だということです。
◆気を抜けない最後の30分
建築の骨格がまとまりやすい方向で固まってしまえば、次は、各ゾーンに属すべき所要室を配置していけばいいことになります。
この段階は、所要室をどう取るかの問題で、消しゴムを多用することになるでしょうが、このレベルでの手戻りは、部分的な修正にどどまります。
「50m2のスペースの取り方で、7m×7mとしていたが、5m×10mにした方が、廊下がきれいに納まるので修正した」というようなことです。
こういった感覚的な修正は、製図の段階でも直せることなので、時間を気にしながら条件を満たしていくことの方が大切です。
大事なのは、エスキースに見通しが立ち、製図に入る前30分の見直しです。
もちろんこれは、3時間30分でかきあげるスピードのある人が、スタートから1時間30分を経過した段階でのことです。
時間的に余裕があっても、早く製図に移りたいと考えるのも人間でしょうが、ここで所要室の漏れや避難動線に問題がないかチェックしておくべきです。
エスキースが終わったという達成感もあり意外と気の抜けてしまう時間帯ですが、製図に入ってからでは取りかえしのつかないことを点検し解決してから、製図に専念すべきです。
◆最初と最後の30分を制す
エスキース2時間のうち大事なのは、最初と最後の30分であることは、上に述べてきた通りです。
カド番脱出体験記で、大林さんも「答えのヒントは、設計条件に出ている。条件の一言一言を漏らさず、図面に翻訳してあげるような気持ちで、かくことを心がけた。」と言っていますが、与えられた設計条件を、やさしく、わかりやすく翻訳し、ストーリーの展開を決めるのが最初の30分です。
そして、このストーリーに誤字脱字がないかチェックするのが最後の30分です。
2時間の中でも、特にこの前後30分は、細心の注意をはらうべき気の抜けない時間帯です。
これらの時間帯を制することができれば、製図の3時間30分は、かくことに専念でき、合格できる図面として完成させることができるでしょう。
ご意見・ご質問などあれば、kito@archicom.co.jpまでご連絡下さい。
1999年9月17日
建築士の塾 木藤浩実
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