10月11日に本試験が終わってから2ヶ月以上が経過し、いよいよクリスマスの日に合格発表となります。
また、年が明けると再試験もあり、課題は同じ「多目的ホールのある事務所ビル」ですが、10月の試験は例年に比べ話題性のある内容だったので、終わった方、これから受験する方に一言!
◆SRCではあったけど
無柱空間の事務室で構造がSRCという条件でしたが、これをどう受けとめるべきであったのでしょうか?
多目的ホールのような大空間のある場合の試験での組立てとして、7m×7mを基本グリッドとしたRCとSRCの違いを考えてみます。
RCで組立てていく場合はスパンを14m飛ばすと、この上部には所要室を設置しないことが鉄則になります。
これに対しSRCでは、上の階にも所要室を設けることができますので、同じグリッドで構成するのなら、SRCの方が制約は少なくなると言えます。
したがって、試験対策として、多目的ホールの上に事務室を載せるようなSRCの課題をやっておいたことは、本試験がSRCだったというだけで「ズバリ的中!」などとは言えないのではないでしょうか?
本試験では、多目的ホールの天井高が7m以上の条件になっていましたが、これによって多目的ホールの上部に事務室等を設置しにくくしていたように思います。なぜなら、ハートビル法の誘導的基準の制限もあり、1階の階高を4.1m程度におさえておかなければならないからです。
このように考えると、基本はRCの考え方で組立てていき、無柱空間という条件を満足するためにSRCということを活かして事務室内にある柱をとってしまうということが、ひとつの解答方法であったと思います。
SRCの条件を中心に試験対策をやっておいて、本試験がRCであった場合は、習慣づいてしまったSRC組立て方が、RCにおいては構造的な問題を生じてしまう可能性があったと思います。
しかし、RCの構成方法で、SRCを組み立てても構造的に大きく減点されるようなことにはならなかったはずです。
◆いつものスパンで大丈夫
試験対策として仮に10課題をやるにしても、5課題は7m×7mであとの5課題は6m×8mというような取り組み方より、7m×7mで10課題をやった方がいいと考えます。もちろん、同じ課題を何通りかのスパン割で検討しておく余裕があれば、それにこしたことはありませんが・・・。
建築士の塾では、7m×7mのグリッドで自分のスタイルをつくることを薦めています。なぜかと言えば、エスキースの途中で階段の位置を90度回転した方がよい場合などに、正方形グリッドだと修正がききやすいからです。6m×8mであると、8m方向に階段をとっておいて90度回転させると、踏面、けあげがハートビル法の誘導的基準を満足しなくなってしまうことが起こりえます。
それと本試験の敷地条件は、過去の課題を見れば、東西50mで南北が40mや35mといった5の倍数です。したがって、スパン割に問題があって納まらないということもないと言えます。
さて、今年の課題についてですが、事務室350m2であったので、7m×7mのグリッドでは1グリッド分半端がでて長方形の室になりません。SRCで無柱空間という条件からも、事務室の短辺方向のスパンを調整するという意図は感じられます。
しかし、ここで考えなくてはならないことは、1階と2階の所要室の配置条件が非常に厳しいということです。厳しい条件の中でも、まとめきれる可能性が高いのは普段から慣れているグリッドであるはずです。
本試験の途中で、スパン割を変えるべきか?変えないべきか?という葛藤があったと思いますが、後者を選ぶべきだったのではないでしょうか。なぜなら、
スパン割を変えて、基準階だけきれいにまとまっていても、1、2階でまとまりが悪く条件を満足できていないことの方が、リスクは高かったのではないかと思うからです。
SRCとしたことで、350m2の長方形の事務室が無柱で可能となるようにされていますが、極端な話、コアのまわりに奥行き7mでL字型やコの字型の事務室を設置しても無柱空間と言えますし、これだとダメで不合格になるということは、まずないのではないでしょうか。
今年の課題では、基準階によって階段、エレベーターの位置に制約を受けながらも、いかに1、2階をまとめきれるかにポイントがあったのではなかと思います。
◆そもそも試験で発揮しなければならないことは
例年受験した方から本試験でどんなプランをかいたのか、終わってからヒアリングをして、合否と照らし合わせていますが、合格した人でも多少のかき損じは必ずあるものです。
しかし、合格している内容で共通しているのは、プランニングの骨格がしっかりまとまっているということです。プランニングの骨格とは、スパン割、ゾーニング、ホールや廊下の取り方、階段の位置などをさします。
こういった点がしっかりしていれば、余程の条件違反がない限り、まず不合格となることはないと思います。
「非常用進入口や避雷針をかけ」と指導しているところもあるようですが、条件にないこれらのものをかくことは、骨格のまずさをごまかす化粧みたいなもので、かかされた人の気休めにしかならないのではないでしょうか。
また、「あれもかきなさい」「これもかきなさい」と機械的に義務だけを強要されてしまうと、何を優先させなければならないのかがわからなくなってしまいますし、自分でまとめる力もつかないのではないかと思います。
図面には何課題かこなしていくうちに、まとめ方に必ず個性というものが出てきます。この過程の中で各自が骨格を固めていき、「骨格づくりが重要なんだ」とわかっていれば、構造がRCであれSRCであれ、これに振り回されるようなことはなかったと思います。
以上、建築士の塾での指導の基本にしていることを申し上げました。
こういった考え方でつくった解答例がありますので、参考にしてみて下さい。
また、ご意見・ご質問などあれば、kito@archicom.co.jpまでご連絡下さい。
1998年12月15日
建築士の塾 木藤浩実
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