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◆所要室としてのプール室の大きさ
300m2以上の大きさの所要室について、平成7年以降、どのようなものが要求されてきているか整理してみます。
・平成7年には、集会室約400m2、図書室約400m2
・平成8年には、一般開架閲覧室約300m2、温室約400m2
・平成10年には、事務室約350m2
以上の通り、どんなに大きなものでも、400m2程度であったことがわかります。
平成7年のような集会室を例にすれば、その機能上の制約から無柱空間の矩形平面とする必要があり、さらに大空間(S造大スパンの場合)の原則から、その上部に所要室を配置しないというプランニング上の制約がかかります。
2階建である場合、こういった400m2の大空間を1階に設置すれば、直上に所要室を配置できず、2階には床が400m2分確保できなくなります。
逆に、2階に設置すれば、1階には、その直下でも400m2分の床は確保できます。
このことは、3階建であっても同じことで、床面積の配分だけを考えれば、上階に設置するほど、より多くの床が確保でき、動線等のスペースに余裕が生じる計画になってくることも大空間がプランニングに与える影響の1つです。
さて、今度はプール室についてですが、仮に25mプールで5コースを設けることを考えてみます。
1コースの幅を2mとし、コース外の余裕を両サイドに0.5m確保しますと、プールの幅は11m必要になります。
長さ25m幅11mのプールの周囲に3m程度のプールサイドがあることを加味しますと、プール室として、500m2程度の大きさが必要になり、さらに矩形平面であるという制約がかかってきます。
もちろん、25mプールが要求されると決めつけられるわけではありませんが、過去の課題の中でも規模が大きく、矩形という制約を受けた大空間(S造大スパン)になる可能性を含んでいると言えます。
また、断面的な影響として、一般プールの水深を1.2mとしますと、2階にプールがあれば、1階の天井ふところを2m程度確保する必要があります。
1階の階高を4mにしてしまうと、プールの下部では2mしか天井高が取れなくなってしまい問題が生じます。
階高を5mと高くすれば、ハートビル法を満足するため、階段室のボリュームを大きくする必要もあり、プールの断面を考慮しながら平面計画・断面計画を進めていくことが求められてきます。
◆大きなプール室が動線計画等に及ぼすこと
試験での敷地の大きさは、過去の例からしますと、平面図2面を要求する場合、50m(55m)×50m、平面図3面を要求する場合、35m(38m、40m)×50mといったものになっています。(38mは例外として、基本は5の倍数です)
こういった大きさになっているのは、用紙がA2サイズで、受験者の解答から様々なプランが出てくることを想定し、プランによって用紙に納まらないということが起こらないためだと思われます。
と去年のこの時期に書きましたら、本試験では36m×52mという敷地の大きさでしたが、用紙がA2サイズであることから、程度の問題で言えば、敷地の大きさは上の内容が目安になると思います。
以上のことを前提にしますと、建物を7mスパンで構成していく場合、2階建で短辺5スパン・長辺6スパン、3階建で短辺4スパン・長辺6スパンというのがボリュームの目安になり、1フロア1,000m2〜1,500m2という床面積を確保することが可能です。
プール室へは、ホールなど動線部から直接出入りするのではなく、更衣室・シャワー室などを経由する格好になりますので、これらの所要室を隣接させながら配置していく必要もあり、これらをプールに関するパッケージと捉えれば、25mプール1つを設ける場合でも、プール部門が1フロアに占める割合の大きさがわかります。
子供用プールなどが併設されれば、その割合は、さらに大きくなっていきます(プール室としてはL字形にもなりえます)。
1フロアの半分以上を占める矩形平面のプール室の配置の仕方は、その大きさゆえに、長手方向を東西にとるとか南北にとるとか、ある程度限られてしまいます。
プール室の配置にそれほど選択肢がないということは、ある程度建物の骨格が限定される中で、エントランスホール、階段・EVといった動線の起点を検討し、ゾーニング・動線計画を進めながらその他の所要室の位置を決めていくことになります。
難しい課題というのは、どのように計画を進めていくと条件を満足でき、まとめやすい方向になるのか、所要室等の配置に様々な選択肢がある中、なかなか決まらず試行錯誤を繰り返すものだと思います。
このように考えますと、大きな矩形平面のプール室という存在が、選択肢を限定するようだと、ゾーニング・動線計画で迷うことが低減される可能性があり、組立て方が原則化されやすいとも言えます。
しかし、以上のようなことは十分踏まえた上で、本試験の課題はつくられるのでしょうから、どのような条件設定で原則を崩していくかが、課題作成のカギになるのではないかと考えます。
もちろん、更衣室・シャワー室等を経由したプール室へのアプローチの仕方や異なる利用時間にも配慮した他の部門を含めたゾーニングの仕方など基本的なことを学んだ上で、様々な条件に対応できる力を身に付けておくことが重要だと思います。
◆試験で試されること
学科試験は、昨年にも増して難しい内容であったようです。
当塾[学科コース]の受講者(27歳女性)で、合格基準点をクリアできそうだという方から頂いた学科試験後の感想を以下に記します。
「やはり、かなり難しい!と言うのが、問題を開いたときの第1印象です。
重箱のスミをつつくと言うよりは、建築をわかっている人にしか解けない問題が多いというのが、試験を終えての感想です。納得できる難しさとも言えますが。」
ここ1、2年学科、設計製図とも、試験の質が変わってきているように思います。
この変化に伴って、合格率も低下してきていますが、何が問われる試験であるかは上の感想にある「建築をわかっている人にしか解けない問題」という言葉に示されていると考えます。
昨年公表された設計製図試験の合格者が有するとされる「知識及び技能」とは、一級建築士として必要な「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」と示されましたが、具体性には欠けています。
「建築をわかっている人」というのも、「で、どんな人?」と問われてしまえば、明解に答えられるものでもありません。
しかしながら、出題者は、クイズの正解を当てることのできる人を見出すために問題をつくっているのではなく、出題者なりに「建築をわかっている人」ということを想定して、問題を通じて試してきているのだと思います。
平成12年「世代間の交流ができるコミュニティセンター」では、1.5mの高低差のある傾斜地というのが特徴的でしたが、平面的にプランニングするだけではなく、断面的検討も併行させながら三次元的に構成していける力が試されていたのではないかと思います。
また、約200m2の多目的ホールを要求しておきながら、構造条件は鉄筋コンクリート造であり、一部鉄骨造可ということにしなかったのも、大空間に対し、どう鉄筋コンクリート造で対処するかということが試されていたように思います。
こういった受験者を考えさせる投げかけが、平成12年の出題者の「建築をわかっている人は?」ということに対する回答になるのではないでしょうか。
したがって、本試験対策としての課題づくりにおいても、1つ1つの課題にテーマを設定し、その課題を通じて訓練できていることできていないことをはっきりさせておく必要があると思っています。
ご意見・ご質問などあれば、kito@archicom.co.jpまでご連絡下さい。
2002年8月14日
建築士の塾 木藤浩実
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