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◆なぜ「店舗を併設した集合住宅(3階建)」ではないのか?
昭和62年「店舗などの施設のある市街地共同住宅」、平成5年「メゾネット住戸のある集合住宅(3階建)」、平成11年「高齢者施設を併設した集合住宅」という課題タイトルの傾向からからすると、なぜ今年の課題は「店舗を併設した集合住宅」ではなく、また「(3階建)」という条件を付加しているのでしょうか?
この点について、過去の出題をからめて考察してみます。
昭和62年の課題は、7階建で、1階に店舗とアスレチッククラブの設置を要求し、2〜7階に3LDK(一部2LDK可)住戸40戸の設置を要求しています。
1階においては、外部から直接アプローチできる店舗を2区画程度設ければよく、アスレチッククラブ部門の中で、いくつかの所要室をうまくゾーニングし、動線が計画できているかが試されていたことの1つと言えます。
これに加えて、住宅のエントランスとEV+階段のコアで2グリッド程のスペースが1階に必要になりますが、これをどこに配置するかが、他機能併設の集合住宅の難しいところです。
住宅コアの位置は、住戸の配置に大きく影響しますので、1階を固定してしまって、住戸階を計画しようとすると、コアとの関係で住戸がうまく納まらなかったり、北側にバルコニー(南側に共用廊下)を設けるような住戸のプランになってしまったりします。
予め住戸の配置を想定した上で、コアの位置を決め、これで1階のアプローチ・ゾーニングがうまくいくか検討を重ねていく必要があります。
平成11年の課題も、やはり7階建で、1階と2階に高齢者施設を設置し、3〜7階に3LDK住戸30戸の設置を要求しています。
住宅コアの検討の必要性は、昭和62年の課題と同じことになりますが、高齢者施設が1階と2階に要求されていますので、平面的なゾーニング・動線計画に加えて、断面的なゾーニング・動線計画の検討が要求されていたと言えます。
今年の課題として、1階に店舗部門、2・3階を基準階としてフラット住戸を設置し、平面図2面(1階と基準階)が要求されることを想定してみると、以下の点に疑問が生じます。
- 過去の課題タイトルの傾向からすると、「店舗を併設した集合住宅」になってしまわないか?
- 2・3階を基準階とするなら、「(3階建)」という条件を付加せず、むしろ7階建などの方が、採光や高さ制限(斜線)などを試験の採点項目に加えることができるのではないか?
◆用途地域から考えること
試験での敷地の大きさは、過去の例からしますと、平面図2面を要求する場合、50m(55m)×50m、平面図3面を要求する場合、35m(38m、40m)×50mといったものになっています。(38mは例外として、基本は5の倍数です)
こういった大きさになっているのは、用紙がA2サイズで、受験者の解答から様々なプランが出てくることを想定し、プランによって用紙に納まらないということが起こらないためだと思われます。
3階建で平面図3面を要求し、敷地が35m×50m=1,750m2であったとします。
平成5年の課題同様、第二種中高層住居専用地域で、建ぺい率60%、容積率150%に設定すると、ボリュームの制限から「(3階建)」という条件に必然性が出てきます。
また、第二種中高層住居専用地域ということから、店舗部分が計画できるのは、2階以下かつ1,500m2以下と用途制限がかかりますので、店舗部分として計画できるのは、1階と2階の一部に限られてきます。(あくまでも、第二種中高層住居専用地域の場合)
当塾では、課題2で、こういった想定に基づいて不特定多数が利用する機能を1階と2階に設置し、住宅を2階と3階に設置した課題をつくっています。
異なる機能が結びついて1つの建築物となることで複合施設ということになりますが、そもそも住宅と不特定多数が利用する店舗とは、機能的に相容れない点があります。
この課題では、住宅の採光やプライバシーなどに配慮しながら、住宅とその他の機能が共存する階(2階)において、いかに住戸を配置し組立てていくかが難しい点です。
◆課題を通じて訓練しておくべきこと
課題タイトルに「複合施設」と掲げられている以上、店舗の上に集合住宅が載ってくるタイプや、1階や2階で店舗と住宅が共存するタイプなどに対し、複合させながらも、住宅の採光、プライバシーなどの居住性を重視して組立てていける力をつけておく必要があると考えます。
当塾では、各課題にテーマを定め条件設定をしていますが、訓練していくねらいをいくつかあげてみますので、参考にしてみて下さい。
- 住戸の配置を想定しコアの位置を決め、それで1階のアプローチ・ゾーニングがうまくまとまるか上下階相互に検討を重ねていく習慣をつける。(店舗の上に集合住宅が載ってくる条件であれば、1階のみ店舗でも、1・2階店舗でも同じ訓練が可能)
- 不特定多数が利用する機能が1階と2階に分かれた場合、EV+階段の位置を決定する上で、日常的な使いやすさと非常時の安全性を考える習慣をつける。(店舗は2方向避難の重複距離が15mと厳しくなるので、2階に200m2程度の大きさの店舗を設ける場合、店舗の出入口の取り方には注意が必要)
- 1階や2階において住宅と店舗などの不特定多数が利用する機能が共存する場合、機能的に相容れない点を考え、住戸のプライバシーや採光に配慮して住宅の独立性を配慮する習慣をつける。(4LDKメゾネット住戸や3LDKフラット住戸などが要求され開口面が多くなる場合、対面する建築物の壁面との距離の取り方には注意が必要)
以上、色々と書きましたが、課題に取り組む上で大事なことは、取り組んだ課題から何が訓練できていて、何が訓練できていないか自覚しておくことだと思います。
「複合施設」の複合のさせ方には、いくつかのケースが考えられますので、偏重しない取り組みも大切です。
ご意見・ご質問などあれば、kito@archicom.co.jpまでご連絡下さい。
2001年8月10日
建築士の塾 木藤浩実
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